受け身は、芝居のリアリティを増すための技術|俳優が倒れる芝居で知っておきたいこと
転ぶ、倒れる、吹き飛ばされる。アクション作品でなくても、ドラマや舞台では意外とよくある芝居です。
現場で「殴られて倒れてください」と指示が出たとき、いちばんやってはいけないのは、勢いに任せて倒れることです。怖いまま無理に倒れると体が強張って、首や腰を痛めたり、カメラの前で不自然な動きになったりします。
そこで必要になるのが受け身です。受け身というと怪我を防ぐためのものと思われがちですが、俳優にとってはそれだけではありません。
受け身は「安全ブレーキ」
車は、ブレーキを信じられるからこそスピードを出せます。俳優も同じです。
どう倒れれば痛くないか、どう体を地面につければ安全か。その仕組みを体で知っていると、怖さが減ります。
逆に、受け身を知らないまま倒れると、一度の怖い経験で体に勝手にブレーキがかかります。倒れる動きが小さくなり、芝居そのものも小さくなってしまう。受け身は、思い切った芝居をするための命綱です。
武道の受け身と、芝居の受け身は違う
柔道を経験した方なら、受け身はもう知っていると思うかもしれません。ただ、畳の上でバンと音を立てる受け身をそのままカメラの前でやると、「受け身の練習」に見えてしまいます。
俳優に必要なのは、体の内側では衝撃をしっかり逃がしながら、外からは痛そうに、無防備に崩れ落ちて見える受け身です。
身を守る技術を、そのまま演技の一部にする。そこが、武道の受け身とのいちばんの違いです。
現場で「任せられる俳優」になる
撮影現場では、時間が何より大切です。もし誰かが怪我をすれば、撮影は止まります。
テイクを重ねても怪我をせず、指示された位置に正確に倒れ込める俳優は、監督やアクション監督にとって大きな安心材料です。「この人なら倒れる芝居も任せられる」と思ってもらえると、任される芝居の幅は広がっていきます。
リアクションや受け身は、アクション俳優だけのものではありません。すべての俳優にとっての土台です。
受け身は、一人では完成しない
倒れる芝居には、必ず「押す側」「殴る側」がいます。現場で「もっと強く押して」と指示が入っても、本当に力任せで押せば、受ける側は衝撃を逃がしきれません。かといって遠慮しすぎると、カメラには嘘っぽく映ります。
強く押したように見せながら、相手の体には負担をかけない。その両立は、受ける側と攻める側が呼吸を合わせてはじめて成り立ちます。両方の立場を経験すると、「どのタイミングで押せば相手が安全に倒れられるか」が体でわかるようになります。
ちなみに、倒れる前の「殴られる芝居」でよくあるつまずきは、「殴られる芝居が「効いて見えない」3つの理由」にまとめています。
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