殴られる芝居が「効いて見えない」3つの理由|アクション監督が教えるリアクションのコツ

殴られる芝居、押される芝居。台本に書かれていれば、アクション作品でなくても俳優なら誰でもやる可能性があります。

ところが、一生懸命やっているのに、モニターで見ると「当たっていない」ように見えてしまう。そんな経験はありませんか。

私は1991年公開の映画『バカヤロー4 You!おまえのことだよ』で、香港のアクションスター、ユン・ピョウさんの後ろ回し蹴りを受けて、きりもみ回転しながら階段に激突する役を演じました。

憧れの人との共演で気持ちの昂りも緊張もありましたが、何度も練習してきたリアクションだったので、1テイクでOKが出ました。本番で通用するリアクションは、その場の勢いではなく、事前の準備で決まります。

アクションの現場に30年以上いると、効いて見えないリアクションには共通する原因があることに気づきます。どれも才能や運動神経の問題ではなく、「知っているかどうか」の差です。

そもそも、リアクションとは何か

リアクション演技は、「痛みに耐えること」だと思っている俳優さんもいます。でも実際は逆です。

衝撃を受け止めて我慢するのではなく、攻撃の勢いを、自分でコントロールした体の動きで見せる技術です。だから当たっていないのに、当たって見える。そして、何テイク撮っても体を痛めずに同じ芝居ができます。

この前提で、よくある3つの原因を見ていきます。

理由① 力が入りすぎている

本気で見せようとするほど、体は固くなります。固い体は、衝撃を受けても動きが小さく、一枚の板のように見えます。

力を抜いておくと、攻撃を受けた瞬間に首や肩、腰が自然に連動して動きます。その「揺れ」が、見ている人に衝撃の大きさを伝えます。

力んでいる体は怪我にもつながります。倒れる動きが加わると、固まった首や腰を痛めやすくなるからです。

理由② 当たる前に反応している

攻撃が来ることは、台本でも段取りでもわかっています。だからつい、先に動いてしまう。

ほんの一瞬早いだけでも、カメラはそれを捉えます。見ている人には「当たっていない」と伝わってしまいます。

コツは、相手の動きをよく見て、当たる瞬間に合わせること。そのためには、相手とのアイコンタクトと、安全な間合いが欠かせません。リアクションは一人ではなく、攻撃する側と作る芝居です。

理由③ どこをどれくらい殴られたかを表現していない

実際には当てていないので、痛みの実感はありません。そのため、殴られたはずなのに痛さが伝わってこないことがあります。

原因は、「どこを、どれくらい殴られたか」を体で説明していないことです。

  • 殴られた場所を手で押さえたり、顔を歪める
  • 足を蹴られたら、その後も少し引きずる
  • 攻撃が強ければ後ずさり、もっと強ければ崩れ落ちる

こうした「その後」まで演じると、リアリティは大きく変わります。攻撃の強さに合わせてリアクションの大きさを変えるのも、大事なポイントです。

いちばん大事なのは、安全に「繰り返せる」こと

撮影では、同じシーンを角度を変えて何度も撮ることも多いです。毎回ちゃんと「効いて」見えて、毎回ちゃんと安全。それがプロのリアクションです。

そして、殴られたあとに倒れる芝居が続くときに必要になるのが、受け身です。受け身については、「受け身は、芝居のリアリティを増すための技術」で詳しく書いています。


ADRENIXでは、こうしたリアクションや受け身を実際に体を動かしながら学べる、俳優のための少人数ワークショップを開催しています。開催情報はワークショップ一覧でご案内しています。

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